裏白洲次郎
今夜のNHKドラマスペシャル「白洲次郎」は、久しぶりに大人の鑑賞に耐える作品を提供していた。
白洲夫妻については、ここ数年”異常”な人気があったから、ある意味で時宜を得たのかもしれない。ドラマのレベルは高いと思った。
今、私自身ドラマを研究しているから、このテレビドラマがどれほど凝っているかは理解できた。私がやろうとするドラマなど、予算において一桁いやもっと低いかもしれない。相当贅沢な番組だった。それと配役がよかった。主役の白洲夫妻を演じた伊勢谷裕介と中谷美紀は見事な演技と存在感だった。晩年の次郎の神山繁はいただけない。
伝記のドラマだから、登場する人物は実在している。だから、すべて事実かというとそうはならない。次郎のリベラルなヒーローぶりは格好良すぎではあった。それが悪いというわけではないが、歴史の事実を知らない若者たちが見れば、宮中反戦グループはさもレジスタンスを貫いたようにみえ、リーダーたち貴族のあり方にも無批判になってしまうかもしれない。
ドラマの最後に、「これは事実にもとずいたフィクションである」とテロップが出ていたのは、まあ順当な措置だろう。
さて、本日、大伴昌司の母四至本アイさんを訪ねた。100歳の傑女だ。夫は四至本八郎。20年ほど前に亡くなっている。この八郎は、実は白洲次郎のように表には出なかったが、同じ軌跡を歩いた人物だということを、アイさんは教えてくれた。
八郎も次郎同様アメリカの大学を卒業してアメリカでジャーナリストの腕を磨く。そこでルーズベルト人脈との交流を深めて帰国。その政策を報告した『ブレーントラスト』は戦前のベストセラーとなる。その米国通をかわれて、八郎は近衛内閣のブレーンとなる。やがて、政府からメキシコとの貿易振興の斡旋所の所長となってメキシコへ派遣される。
戦後の八郎の活躍(暗躍)こそ裏次郎にふさわしい。
昭和25年クリスマスイブの日に副総理の上原とともに羽田を立ってアメリカに向かう。時の首相吉田茂から直々に依頼されたのだ。日米講和条約の根回しにワシントンに向かったのだ。講和は大統領が認めるだけでは成立しない。上下両院の議員の同意も必要なのだ。その議会への働きかけを、八郎は上原とともに3ヶ月にわたり行った。
帰国したのは翌年の3月3日、ひな祭りの日だったから、アイさんはよく記憶している。それから半年後、吉田茂は白洲次郎を連れて、条約調印に向かったのだが、八郎は表には出ないでその達成を裏で動いていたのだ。
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