初めの頃
「ヒトラーの贋札」は80回アカデミー外国語映画賞の受賞作だということで期待して見たが、つまらなかった。思わせぶりな映像と演技がハナについた。最後まで見れば仕掛けがあったのかもしれないが、物語の前半で見る気が失せた。
ということで、映画を見るのをやめて、藤子不二雄Aの「愛・・・しりそめし頃に・・・」の4巻から6巻までを読んだ。今取材している「赤塚不二夫論」と「少年週刊誌」の番組と連関する”文献”だと思って購入した青年コミックだが、すっかり魅せられている。現在8巻まで発売されているが、すべて手にいれた。残りの7、8巻を読むのが楽しみだ。この作品は、藤子の自伝的な漫画で、これに先行する「まんが道」の青春編ともいえるものだ。
富山から出てきた若い漫画家満賀道雄がトキワ荘に住んで、仕事とともに人生を学んで行くというビルディングスロマンだ。
漫画というメディアがどうやって発達していくかが、満賀とその友人たち、そして手塚治虫のウゴキからよく分かる。分かるという情報だけでなく、貧しい青年が志を必死で守り抜いていく姿に、ちょっぴり感動する。
自伝漫画ではあるがむろんフィクション化されていることもある。すべて事実だととらえるべきではないとは承知しているが、トキワ荘仲間のトモガキとはこうであったのだろうなあと彷彿させる。
この漫画の節目に、詩が出て来る。藤子は詞と記しているのは、照れているからだろう。ちょっとセンチな詞がなかなかいいのだ。その詞には作者名があって、いろいろなものがある。ホイットニー、サトウ緑郎、ヨド・ハルナガ、三好徹司、白季などなど。あきらかにモジっているから、すべて藤子作だろう。
例えば、石森章太郎が長い旅に出かけてもどってきたときの場面。トキワ荘の2階から、石森が帰って来るのをみつけた満賀が叫ぶ。「おーい、石森氏が帰ってきたぞ!」仲間たちが駆けつける足元。そして玄関で出迎える。この最後のコマはロングショットで、石森の背中ごしにテラさんや満賀、赤塚の顔が並ぶ。そこに白季の詞「友帰る」が四角の吹き出しに記される。(映像でいえばナレーションのように)
帰ってきた 帰ってきた
友だちが 帰ってきた
長い旅の末に・・・
さあ 今夜は
宴をはろう
彼をかこんで・・・
盃をくみかわし
つもる話を
しようじゃないか
この詞という演出が実にうまくはまっている。この「愛・・・しりそめし頃に・・・」を読んでいると、市川準の映画を見ているようなほのぼの感がある。
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