雪あかりの路
日が翳ったかと思うと、すさまじい吹雪がきた。たちまち、町はぼんやりかすむ。北の国の人影がかなしい。小樽の坂道をのしのし歩きながら、久しぶりに雪を私は味わっていた。
小樽は初めてだ。ここで開かれている「雪あかりの路」の実行委員会に話を聞くためにやってきた。本日が最終日。佐世保や長崎と同じ、港町は坂の町だ。風景が歩いているとどんどん変わることが坂の町の楽しさだ。小樽といえば、伊藤整。たしか、彼の詩に雪あかりの路というのがあったはずだ。このフェスティバルのネーミングもそこからきていると推測できる。そして、プロレタリア文学の小林多喜二。この町は、一昔まえの懐かしいサヨクたちを輩出した町だ。
雪あかりの路というフェスティバルは市民ボランティアの手で11年前から運営されている「冬の祭」。有名な運河倉庫群のそばのプロムナード一帯に、ミニ鎌倉のような雪のほこらがたくさん作られ、そのほこらのなかに蝋燭を灯して楽しむ。すべての運営は市民ボランティアの手によって運営され、つまらない商業主義はないから、雪の白さとろうそくの炎のモノトーンの美しい世界が築かれていた。この祭は夕方5時にボランティアの手で点灯され9時には消灯となる。特筆は、200名の市民ボランティアのなかに韓国人ボランティアが50名含まれていることだ。そもそも、この祭は小樽商科大に留学していた韓国人の手によって始まったから、その伝統で現在もおおぜいの韓国人スタッフが活躍していると、案内してくれたボランティアのリーダーが語っていた。
私はすぐにピンときた。岩井俊二の映画「ラブレター」の影響ではないですかと問うと、そうだという答え。中山美穂の主演で小樽を舞台にしたこの物語は、今から10年以上前にヒットしたが、韓国ではたいへんな評判となった。ちょうど、民主化が進んだ頃で、日本から入る文化、村上春樹と岩井のこの映画がすさまじいブレイクをしたのだ。その後、「冬のソナタ」が韓国から生まれたときに、この映画の影響から冬ソナが生まれたのではないかということが話題になった。実際に影響があったかとユン監督に聞いたことがある。監督はこの映画を見ていない、だから直接の影響は受けていないがこの映画が韓国人のなかで大きな話題になったことは知っていた。つまり、韓国のある層は「ラブレター」のような物語が好きだったのだ。それが、後に冬ソナを生み出してくる契機となったと、私はみている。
今朝、私は小樽「船見坂」へ行った。「ラブレター」の主人公藤井樹が自転車で下る有名な場面のロケ地だ。現場は吹雪いていた。人影も車の影もなかったが、白い雪の世界は心に沁みた。

蛇足だが、小樽はすし屋が多い。人口13万ほどの町に120軒のすし屋があるそうだ。そして、私は町の繁華街からすこし離れた場所にある「庄坊番屋」を薦める。ここで食べたホッキ貝がめっぽう美味。ほろ酔いで吹雪かれて帰る路は楽しかった。今夜は、札幌へ移動。
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