木綿のハンカチーフ
一月ほど前の「週刊ポスト」を、診療所の待合室でぱらぱらと読んだ。「瞬間の残像・我が人生の分水嶺」というコラムで、太田裕美が登場している。彼女の最大のヒット曲「木綿のハンカチーフ」にまつわる話を告白している。
木綿のハンカチーフは名曲である。田舎で付き合っていた男女。その男が都会つまり東京へ出て遊び呆けているうちに、田舎へ残してきた彼女のことをすっかり忘れたという物語。そう言われた田舎で待つ女性が、最後にハンカチをくださいと頼む。別れることを思って流れる涙を拭くハンカチをくださいと頼むという、筋書きの歌詞カードが、私をはじめ大勢の人が共感した。でも、週刊ポストでインタビューに答える太田裕美はあっけらかんという。「ひどい男もいるなあ」って。そりゃそのとおりだ。でも、いまどきの女の子はこうではないわな。むしろ、男女逆転じゃないだろうか。女子が東京の大学へ行って合コンなどの遊びを覚えて、田舎で働く男のことなど忘れてしまった。純情な男は女の帰りを待つなんて筋書きのほうが現代らしい。
この間、一人カラオケに行って、この歌の面白い面を発見した。一度、この木綿のハンカチーフを歌ったのだが、なんとなくキイが合わないで不本意だったので、続けて、同じ曲のリクエストをした。すると、流れてくる映像の種類が違っていた。
最初に流れた映像は、歌詞とあまり関係のないストーリー。主人公は都会の花屋の店員。てきぱきとした男まさりの活発な女の子。ジーンズ姿でしっかり者。そこへ、時々やって来る若いサラリーマンにちょっといい感じをもつ。いつも、花を買っていく感じに引かれていく。ある日、その男は正装して、大きな花束を買った。主人公はあてもないのに期待した。
すると、その男はフィアンセと思しき女と現れて幸せそうに、新しい花束を買う。見送る主人公の寂しそうな顔で、物語は終わる。元歌どおり、悲しい女の子が主人公だ。
2番目の映像は、田舎の邸宅の令嬢が主人公。夏の朝、彼女は広大な庭にホースで水撒きをしている。そこへ表の通りに、若い男が自転車でゆきすぎる。ホースの水は庭を越えて、通りまで飛ぶ。そこへ、男がやってきてずぶ濡れになる。女主人公は慌てて、男に詫びることから二人の交際は始まる。楽しい日々。
そして、ある日男は東京へ旅立っていく。学業かそれとも就職か。女は、男からの連絡を待つがいっこうに来ない。やがて、秋となり冬となり、春が来た。そして初夏、女の子は、今日もまたさびしく庭に水撒きをしている。すると、画面の奥から男が現れる。女は気づかない。男は女の後ろに回りそっと近づく。
気配を感じた女が振り向くと、そこにはにっこり笑った男が花束をもって立っている。呆然として、その後に見る見る表情がくしゃくしゃになる女。で、画面が終わる。
つまり、木綿のハンカチーフのハッピーエンド版と悲劇版と二つのバージョンがあったのだ。さて、私はどっちが好きだろう。
本音は、水撒き版。原作のイメージは花屋悲しい版のほうが近いのだが、気分としてはハッピーエンドにしたいのだ。これだったら、太田裕美嬢も、男を責めないだろう。
ところで、このカラオケの映像に、私は今とても関心がある。わずか3分のドラマだが、ぴたっと心に沁みるものと、まったく頓珍漢なものと2種類あって、それを作ってみたい欲望にかられるのだ。下手糞な映像を見るたび、これはオイラに任せろーと叫びたくなるのだ。
今、とても作成したいカラオケ画像は、「青春の城下町」と「池上線」「案山子」、そして「花吹雪」だ。
映像のヒントは「冬のソナタ」。例えば、海辺の最後のデート、スキー場の降雪機の下で泣くユジン、そして再会する不可能の家。つまり、ユン監督の映像が、一番参照になるのだ。
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