品川の赤提灯
昨夜、品川で打ち合わせがあった。品川駅前にある閉鎖されたホテルを見た。そのホテルは経営者の他の事業の失敗をうけて倒産となり、従業員たちが不当解雇をさけんでロックアウトしたが、先月強制執行で排除された、あのホテルだ。
駅前の繁華街にあるホテルは灯りをすべて落とし、不気味に立っていた。スクランブル交差点を渡るおおぜいの群衆は誰も見ていない。
打ち合わせは品川駅の隣のビルで、以前は銀行のあった場所で、その2階にある居酒屋で行った。連れが知っている店で、まあまあの店ですよということで、入った。まあまあというのは、最近の若い人がよく使うワタミとかテングとかのチェーン居酒屋でないということだ。ああいう店では、いくら安くても調理済みの冷凍食品を食べさせられているような気がするので、私はあまり好きでない。品川のその店は昔からあって、オヤジが利用するような店だから、まずいいだろうということだった。
寒いから、熱燗を頼んだ。すぐ来た。あまりに早いのでチンで燗をしているなと、嫌な予感。飲むと酒が薄い。まるでお湯にアルコールを数滴垂らしたほどの酒だ。変だから、女性の従業員に「この酒の銘柄は何?」と訊いた。薄手のセーターを着た女は片言で「・・たしか、××正宗」と答える。どうやら日本人ではないようだ。要領を得ない。
連れと二人で首をひねりながら、3回ほど杯を重ねた。でもオカシイ。少しも酔わない。やがて、頼んでおいた肴が来た。イカの沖作り、食べると水っぽい。びしゃびしゃしている。鰹のタタキ、これは火で焙ったところが半焼け。やはり、この店のメニューはオカシイ。周りを見渡すと、店内は中高年のオッサンたちで一杯で、誰も文句も言わずに飲んだり食べたりしている。私たちのところへ来た肴だけが変なのか。
あまりに酒が薄いから、男の従業員を呼んで、「この酒は薄いと思うんだけど」と言うと、その男は何も言わずに銚子を持って去った。連れと唖然とする。
やがて、男が新しい銚子を提げて来て「今度はダイジョウブだと思います」と告げる。大丈夫という話でもないだろう。いったい、この店は何を食べさせ飲ませているのか。
場所がいいからか、客は次々に来る。よく、こんな店に来るなあ。私たちは早々に出た。連れは弁解する。「3年ほど前まではこんなことはなかったのですが。どうも経営者が変わったみたいで」
最近、こんなことが多い。中高年の溜まる店だから、それなりの店かと思って入ると、ひどい肴しか出て来ないのだ。景気が悪いから、赤提灯で一杯やるだけが楽しみにしている者にとって、まったくひどい状況になっている。
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