滋賀の都
久しぶりに、代島治彦ディレクタープロデューサーに会った。彼とは3年前に映画監督黒木和雄のドキュメントをいっしょに制作した仲である。
ちょうど、黒木監督が戦争4部作の、今となってみれば最後の作品となる「紙屋悦子の青春」にクランクインした頃のことだ。『TOMORROW 明日』『美しい夏キリシマ』『父と暮せば』、と一環して戦争をみつめてきた黒木の映画を、あらためて考えるという番組を作ろうということだった。映画がクランクアップして、これから公開に入るといった段階で、黒木は急死した。そのこともあって、戦争4部作だけでなく、黒木映画そのものも検証しようと、制作の流れを大きく変えた。当初の意図を変更して、ドキュメントを作り替えるというのはたいへんなエネルギーのいるものだ。このとき、代島ディレクターは、私の無理な要求によく応えて最後まで粘って作ってくれた。こうしてETV特集「戦争へのまなざし〜映画作家・黒木和雄の世界〜」は出来上がり、放送されると高い評価を得ることになる。その月のギャラクシー奨励賞を受賞した。
代島ディレクターは元来映画のプロデューサーである。数々のドキュメンタリー映画にも関わっており、ドキュメンタリー学校の講師も勤めている。最近は何をやっていますかと尋ねると、国内のアウトサイダーアートを撮っているということ。
正規の美術教育を受けていない独学の作り手たちの作品「アウトサイダーアート」。今世界的に注目されている。1900年代初めにヨーロッパの精神科医たちによって発見された芸術ジャンルであり、20世紀のアーティストに多大な影響を与えている。近年、日本でも注目が集まっており、さまざまな場所から「誰も知らない天才たち」が発見されている。そんな国内のアウトサイダーアートの作家たち16名の制作現場を記録したドキュメンタリー作品『日本のアウトサイダーアート』。これが代島さんの現在の活動ということだった。
このアウトサイダーアートは昨年「日曜美術館」でも紹介されて、私も見て心に残っていたが、どうやら、その日曜美術館のコンテンツも代島さんの作品だった。このアートの活動が一番盛んな滋賀県に通うことが、現在多いという。
滋賀県には障害者のための優れた施設がたくさんある。20年以上前から、滋賀県では障害者と共生するプログラムを実施してきて、今着実に成果をあげている。この運動の先鞭をつけるようなドキュメンタリー映画がある。名作「信楽から吹く風」だ。この映画の監督の西山正啓さんとも昔いっしょに仕事をしたことがあった。彼は今は福岡を中心に活動しているが。
この「信楽から吹く風」の映画に登場していた人たちが、今では滋賀県の運動の中心にあって、このアウトサイダーアートを支援しているそうだ。
私が小学生の頃、母は教会関係者といっしょに滋賀県の養護施設の支援を行っていた。なぜ滋賀なのだろうと、不思議に思ったが、近江八幡を中心として活発な運動が始まっていたのだ。今では、日本だけでなく、世界からも、この地域の取り組みが注目されるようになっている。
このアウトサイダーアートは現在DVDになって5巻出ているそうだ。ちょっと見てみたい。
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