若い力
休日で、家にいてテレビを見ていると、ふだん見ない番組も見る機会がある。本日、2つの番組を見て感銘を受け、NHKに新しい力が育っていると感じた。
1本目は、昼過ぎに教育テレビで放送された「福祉ネットワーク」で、「“働く”を問い直す若者たち(1)発信編」という内容だった。若者の労働問題をテーマにした雑誌が相次いで創刊されている。その流れの底にあるものを、番組はみつめていた。派手な動きや画があるわけではない。その雑誌を作り上げている人たち、その工夫をきちんと見つめて、現状を報告するだけのものだ。特番ではないレギュラー番組の地味な作りながら、けっして退屈するものでない。「物語」が停滞しない。かつ、制作担当者の伝えたいことがよく分かった。
2本目の番組に私は引き込まれた。夕方6時からの「ホリデーにっぽん」だ。この枠は休日だけのもので、日本全国の若手のディレクターたちが力を尽くすいわば登龍門だ。1月17日の阪神・淡路大震災の日が近いということもあって、あの震災で傷ついた人を追っていた。阪神・淡路大震災からまもなく14年だ。被災地神戸は現在復興がなっている。町の外観はそうだが、復興の歩みに乗り遅れるように、社会から孤立して生きている人たちがいたのだ。
震災障害者――あの大震災で大けがをし人知れず苦しんできた人たちをそう呼ぶということを初めて知った。落ちてきたピアノのために、頭のある部分を切除したため障害が残ったという28歳の女性を、番組はみつめている。それまで普通の中学生だったのだが、その事故を境に人生ががらりと変わる。精神的な傷が今も癒えておらず、それと闘っている。
その彼女がある講演会で、自分の体験を発表することになって、四国にわたる。そこで、まだ触れたくない震災体験の惨状を、偶然聞かされてしまったところから、彼女の苦しみは再び始まる。そのことの解決の方途は番組では示されず、彼女のその後のことも映像としては提示されないまま、番組は終わった。
物語としては物足りないと見る向きもあるかもしれない。でも、私はこれでいいと思った。安易な解決を求めるのでなく、問題はまだ先に続いていくのだという、制作者に安易さを許さず、かつ視聴者にもカタルシスを与えない、この方法でいいと思った。
1本目のスマートな取材に比べて、2本目は必死で被取材者にくらいついている。多少、はらはらする質問を投げる女性ディレクターはまだ若いだろう。
課題は残るにしろ、懸命さとがむしゃらぶりに、私は褒めてあげたい気がした。
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