しみじみと
1人、大磯の家に帰ってきた。夜道を歩いていると、西の空に美しい星が光っていた。今日はクリスマスか。
60の男は40年も前を偲ぶ。高校生から大学生になりかけた頃だった。豊かな暮らしと思っていたが、後から考えるとまだまだ日本は貧しかったのだろう。音楽だって、若者が中心でなかった。大人の歌謡曲の隅っこに青春歌謡があっただけだ。
西郷輝彦が好きだった。「チャペルに続く白い道」「初恋によろしく」という歌を繰り返しては歌った。あのころ、東映の青春映画で、西郷が主演で本間千代子がヒロインで登場した青春映画があった。タイトルは忘れたが、舞台は伊豆の波勝崎だったと記憶する。海辺の町の高校生の物語だった。そういう町に住みたいと願ったことが、今、湘南の海辺の町に住む理由になっている。
家に戻って、ユーチューブで、この歌を探して、カラオケ代わりに大きな声で歌ってみる。
♪合歓の並木のこの道は、チャペルに続く白い道 野原を越えて鐘の音は・・・
私の青春、というかもっと続く番組作りの青春。それは38歳がピークだったか。私はディレクターとして張り切っていた。大江健三郎さんと、核の問題で世界を一周した。「世界はヒロシマを覚えているか」というドキュメンタリーだ。旧ソ連とアメリカを交互に取材した。そのときのカメラマンが親友のコダカちゃんだ。私の一番大事な番組を撮影してくれた、かけがえのない友だ。
彼が病気になった。篤い病だ。今病床にある。本日、その容態を知った。
明日、私は幕張まで行って、彼を見舞う予定だ。彼は14年前私が倒れたとき、遠い辺鄙な病院に2度も訪ねてくれた。その恩はけっして忘れない。
彼とは、大江さんがノーベル賞を受賞したとき、二人で密着取材した。夜の深いストックホルムで議論しながら、大江さんと光さんを撮影したことを、昨日のことのように思い出す。
2008年の終わりに、友のことを思う。
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