いのち
私より若い人がガンと闘っている。限られたいのちと思うだけでも恐怖なのに、そこを見据えて自分で治療を含めた生き方をしっかり考えている。その一点においても、私は頭が下がる。還暦を過ぎたというのに、仕事が減ったとぐずぐず言い続けた私などは、その人の生き方の足元にも及ばない。
でも、私に何が出来るのだろう。慰めなど力をもたないだろう。お為ごかしなことはすぐ分かる。でも、と思う。
夜汽車が通る。遠い汽笛を響かせて夜汽車が通る。比治山の夜桜をみんなで見に行ったことがある。
春先の冷たい夜風のなかで、震えながら酒を飲んだ。とりたてて、宴会めいたことをやったわけではなかったが、みんなで集まって酒を飲んだことが楽しかった。裏から登って、川端のほうへ降りた。たしか、そのまま歩いて流川へ行った。三三五五、塊りになって川淵を歩く。その人影が黒々と揺れていた。桜は覚えていないが、仲間のシルエットは心に焼きついている。
芭蕉の句を思う。
命二つの中に生たる櫻哉
10余年ぶりに服部土芳と再会したときに詠んだ句。生きながらえて2人が会ったそこに、桜がある。桜が命か、2人が命か。
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