キエフ
昨夜、四条大橋の東山側、南座近くにあるレストラン「キエフ」に行った。
先日読んだ、佐藤優の「私のマルクス」に幾度も登場するバーとして心に残っていたからだ。30数年前、同志社神学部の学生だった佐藤は政治活動の合間によくこの店にたまって議論をしたと回想している。店のオーナーは加藤登紀子の父で、戦前ハルピンでインテリジェンス方面で活躍したこともある立志伝的人物だったらしい。
店は6階にあった。初老の女性が受付に立っていたので、「食事ではなく、酒だけなのですがいいですか」と問うと、どうぞと言ってテーブルに案内される。
まずズブロッカを頼む。サラミが付いてきた。香草入りのこのウォッカは私は好きだ。
小腹が空いていたのでボルシチも注文する。
2杯目のアルコールで、佐藤が薦めていたウォッカを飲みたいが、名前を失念した。マネージャーと思しき愛想のいい男性に事情を話すと、莞爾として「あちらのお客様も佐藤さんのウォッカを尋ねていました、今夜は二組目になります」と答える。どうやら、最近この店は「私のマルクス」を読んだファンたちがよく来ているらしい。
酒の名前はストリイチナ。崩壊する前、ソ連時代に製造されたロシア人好みのウォッカだ。実際飲み比べると、私にはズブロッカのほうが美味かった。それからのマネージャーの薀蓄は長かった。店の来歴、店主一族の消息、来店する客層の多様さなど、15分近く膝を折って私の耳元で話す。いささか、私はうんざりしたが、顔だけはにこにこする。(自分でも意外だがちゃんと社交もしている)
キエフと京都は古都ということで姉妹都市になっているとは知らなかった。ロシア、ウクライナ、ベルルーシ、キエフなど旧ソ連邦の要人は来日すると必ずこの店に寄るらしい。
店ではコンサートや老子を読む会、シルクロードの会などさまざまなイベントを催しているが、その中に旧知の人物がいた。
女優の山之内重美さんだ。ロシア語で楽しく歌いましょう「ヤーマチカと歌おう」というコンサートを2ヶ月毎に開いていた。今から30年前にロシアアバンギャルド研究会でいっしょしたことがある人だ。長くNHKのロシア語講座にも出演していた。なるほど、ここは関西のロシア文化の本拠地のような空間なのだ。
店は広々としていて、鴨川を見下ろすいい場所にある。居心地も悪くない。値段も思った以上に高くない。また来ようと思って、店を後にしたのが10時だった。
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