定年再出発  


懐かしい空
by yamato-y
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シリーズ・作品回顧2

 「向田邦子が秘めたもの」

向田邦子が昭和56年に台湾上空で命を落としたときマスコミに大きな衝撃が走った。放送作家として華々しく活躍する一方、鮮烈な文壇デビューを飾ったばかりだったからだ。その華麗なライフスタイルは女性の憧れの的だった。その死を惜しむ声が長く続いた。 しかし、謎となっていることが一つある。才色を兼ね備えた向田はなぜ結婚しなかったのだろうか、恋愛の体験はなかったのだろうか――。
向田邦子の作品の中に「中野のライオン」という不思議なエッセーがある。二十年前に電車からぼんやり外を見ていたら中野のアパートにライオンがいたというのだ。意表をつく話で読者の心をつかんだが、この話の影に向田邦子の恋が隠れている。そのことを私が分かったのは、彼女の番組を制作してからのことだ。
 永く謎とされてきた向田の恋の情報が私のチームにもたらされたのは、没後20年を控えた2000年冬のことだった。向田邦子の遺品から向田の手紙5通、恋人からの手紙3通、そして恋人の大学ノートの日記2冊、が発見されたのだ。向田邦子の若き日の恋の痕跡だった。
 向田には10年以上にわたって深く愛した男性Nがいた。しかしNには妻と子がありおまけにN本人は脳出血の後遺症で苦しんでいて恋は成就しない。当時、向田邦子は荻窪に住み中央線を利用していた。Nは妻と別居して中野の実家に戻っていた。最寄りの駅は中央線高円寺であった。そして昭和39年、その男性が自死をとげて、秘めた恋は終わる。向田邦子34歳のときのことだ。
2001年7月、「没後20年・向田邦子が秘めたもの」と題して100分の特集を私は制作した。大きな反響があった。「番組は向田邦子像を実証的にとらえるうえで、全体の構成もよかったし、テレビドラマの本質を教えてくれた」という批評を得た。
 こうして向田の隠された愛をみつけたのだが、そのことを向田がいっさい語っていないことに私はひっかかっていた。後日、エッセー「中野のライオン」を読んだときひらめくものがあった。
 《今の住まいは青山だが、二十代は杉並に住んでいた。日本橋にある出版社に勤め、通勤は中央線を利用していたのだが、夏の夕方の窓から不思議なものを見た。場所は、中野駅から高円寺寄りの下りの電車の右側である。今は堂々たるビルが立ち並んでいるが、二十何年か昔は、電車と目と鼻のところに木造二階建てのアパートや住宅が立ち並び、夕方などスリップやステテコひとつになってくつろぐ男女の姿や、へたをすると夕餉のおかずまで覗けるという按配であった。
 編集者稼業は夜が遅い。女だてらに酒の味を覚え、強いとおだてられいい気になっていた頃で、滅多にうちで夕食をすることはなかったのだが、その日は、どうした加減か人並みの時間に吉祥寺行きの電車に乗っていた。
 当時のラッシュ・アワーは、クーラーなど無かったから車内は蒸し風呂であった。吊皮にぶら下がり、大きく開け放った窓から夕暮の景色を眺めていた。
 気の早い人間は電灯をつけて夕刊に目を走らせ、のんびりした人間は薄暗がりの中でぼんやりしている――あの時刻である。
 私が見たのは、一頭のライオンであった。
 お粗末な木造アパートの、これも大きく開け放した窓の手すりのところに、一人の男が坐っている。三十歳位のやせた貧相な男で、何度も乱暴に水をくぐらせたらしいダランと伸びてしまったアンダー・シャツ一枚で、ぼんやり外を見ていた。
 その隣りにライオンがいる。たてがみの立派な、かなり大きな雄のライオンで、男とならんで、外を見ていた。》(向田邦子「中野のライオン」)
  邦子は目を疑る。息が詰まった。ところが、まわりの外を見ていた乗客が「あ、ライオンがいる!」と騒ぎたてるかと思っていると、誰も何もいわない。寝ぼけたのかと思い直すが、「そんなことは、絶対ない。あれは、たしかにライオンであった。」と、邦子は胸中でつぶやく。
 嘘のような話である。二十年ほど前にライオンを飼っていました、という人が現れないかなと書いて小説新潮に発表したところ、私がライオンを飼っていたという人物が本当に現れた。発売から五日後、確かに自分が飼っていたという人物が現れたのである。その連絡を受けた時、邦子は――
 《私は受話器を握ったまま、こみ上げてくる笑いを押さえ切れず、裂けた夕刊に顔を押しつけ声を立てて笑ってしまった。悲しくもないのに涙がにじんでくる。はなも出てくる。》(「新宿のライオン」)
 ライオンを目撃した場所は、中央線、中野駅から高円寺寄りの下り電車の右側。そこは、まさにNが住んでいた町の方向にあたる。邦子は中央線、高円寺付近を通過する時、無意識にNの家をさがしていた。その時、視野にライオンが飛び込んできたのだ。
誰の目にも映らないライオンはNと重なる。不自由な右手を使って自炊するNの姿が邦子には見えていた。
だから20年後ライオン実在の連絡を受けたとき、「悲しくもない」のに邦子の目に涙がにじんだのである。
  
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by yamato-y | 2005-02-22 09:15 | シリーズ作品回顧 | Comments(1)
Commented by kimu at 2012-06-19 06:27 x
中野のライオン
20年以上前に読んで印象に残っていました
もう一度読んでみようと思います
エピソード・・・感動しました。ありがとうございます
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