ある個人雑誌
『小松左京マガジン』という個人雑誌がある。バックナンバーを見ると30号を超えている。
50から70ページほどの小冊子といっていいかもしれないが、面白い。誰が企画を立てているのかSFのツボというかキモというか心得ていて、毎号特集が面白い。いろいろな作家やSFファンが意見を寄せている。誰も小松左京に対してこよなく好意を抱いている、ということがひしひしと伝わる。
その中に、小松左京の「漫画」を見つけたというエッセイがあった。筆者は小松多聞。どうやら左京の息子らしい。多聞氏が幼い頃実家の物置で小松左京が若かりし頃描いた漫画を見たことがある。長じて、その漫画が伝説化していて今売ればいい値段になるだろうという情報を知って、再度家捜ししたらその漫画が出てきたと、多聞氏は報告している。筆者の写真が文章のそばにあったが。左京氏と下膨れのところが似ている。こりゃあ、たしかに実の息子だ。そうに決まってらい。
それにしても、多聞氏は文章がなかなかいいのだ。洒脱で軽妙で。だいたい、コマツタモン、なんて筆名を使うなんざ、たいしたタマだ。
だが、この多聞氏の境遇を考えているうちに、同情の念が沸いてきた。こんな偉大な父親をもった息子の生き方も大変だよな。こんなSF界のブルドーザーと異名をとる精力的な作家を父にもったら、何をやっても超えることができず子供としても大変だったと、つい同情したくなる。
今、やっている番組で、小松さんのアルバムを見る機会があった。小学生らしい男の子がシェーをやっていて小さな赤ちゃんを小松さんが抱いているという家族写真を見つけた。男の子はいかにもワルそうだ。この男の子がタモン君かな。別の写真では子供たちの手を引いている小松夫人が写っていた。安気で悠々とした人物と見受けた。どうやら、子育てを立派にやり遂げたのは夫人で、小松左京自身ほとんど手助けもしていないのではないか。これは私にとって他人事ではない。身につまされる。と言った舌の根の乾かぬうちに、都合のいい金言を思い出す。
親がなくても子は育つでなく、親があっても子は育つ。たしか、あの坂口安吾氏が言っていたと記憶するが・・・。
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