雨中行進
嵐の中、大磯へ帰ってきた。吹き降りの雨だからカートが濡れるかもしれないと、ビニールのごみ袋をかけてきた。肩からカバンを掛けカートをゴロゴロ引っ張って山の上を上がったのだ。向かい風で雨が吹きつけるので体の正面がずくずくになる。
でも山道に入ると雨がさえぎられて小降りとなる。だが斜面を重いカートを引き揚げるのはこれまた厄介だ。ツヴァイク道の半ばまでで私は汗で再びずくずくになった。
山道の平たいところで立ち止まって汗をぬぐう。振り向くと、人けのない森は不気味ですらある。でもしばらくたつと、雨水が瀬となって流れ出す音が聞こえてくるやら、葉に降りかかる雨滴が聞こえるやら、森はそれなりにはしゃいでいるようだ。
突然、昨日久しぶりに昔の仕事仲間に会った。新人のときから知っている女性ディレクターKさんだ。妊娠していた。二人めを身ごもったので来週から産休にはいると嬉しそうに報告していた。どうやら、このブログをいつも読んでいるらしい。そういう口ぶりだ。だったら少しぐらい何かコメントを書いてくれよお。
その彼女のぽこんとしたおなかを思い出して、ツヴァイクの森を眺めると、気分はだんだん「わたしのトトロ」になってきた。この薄暗い森のなかからトトロと小トトロがドバーンと現れそうな気がしてきた。
カートを再びごろごろ引っ張ってゆくと、葉っぱの裏に毛虫がじっとしていた。
もみじ山に上がりきると家々が並んでいる。アジサイが各庭から咲きこぼれている。我が家の前にたち、郵便受けから2,3日たまった手紙を取り出す。Kさんと同じときに働いていたやはり女性ディレクターのHさんから結婚しましたという通知が届いていた。
今から15年前、広島で私がぶいぶい言わせていて、彼女らはまだ大学を出たばかりの新人たちだった。その彼女らは身籠ったり結婚したりするような時代になったのだ。私があと半年で還暦をむかえるわけだ。
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