ソフィーの選択
無性に本格派の文藝映画を見たくなったので、昨夜渋谷ツタヤへ行った。あの膨大な映像の倉庫からそのときの気分の1本を探し出すのは至難だ。特に最新作ではどれほどの内容か分からない。旧作の棚を漁った。そして取り出したのが「ソフィーの選択」だ。
メリル・ストリープ主演の作品で原作はあのW・スタイロンだ。ナチのホロコーストを背景にもつ小説だ。かつてこの映画は見たことがある。そのときも物語の巧みさと映像の深い質感に感動した記憶がある。
第2次世界大戦の傷がまだ生々しい頃、スティンゴは南部からニューヨークに出てきてブルックリンのアパートに住む。そのアパートで口汚く言い争っている男女を知る。その女が女ソフィー(メリル・ストリープ)だった。彼女はポーランド人でアメリカに来て間がなく英語がおぼつかない。彼女の腕には囚人番号を刻んだ入れ墨がありアウシュビッツの体験を秘めていた。
以前にこの映画を見たときの味わいは、ユダヤ人ソフィーの悲しみであると解していた。彼女はユダヤ系のポーランド人で、強制収容所へ二人の子どもと連行されたとき、そのうち一人を助けるとドイツ兵に言われ、その「選択」に苦悩するというテーマだとなんとなく記憶していた。ところが今回見直して、その「読み」が大きく過っていることに気づいた。
ソフィーは嘘吐きだった。彼女の父は高名な大学教授でユダヤ人を助けようとした人物だとソフィーは語っていたが事実はそうではなかった。父も彼女もカトリックでむしろユダヤ人を排斥する側にいたのだが、ドイツ軍は詳細を調査することなく父を連行し、彼女もまたソーセージを闇市で買ったことを理由に強制収容所に入れられたのだ。この事実を最初ソフィーは隠している。
ブルックリンのアパートでソフィーが喧嘩をしていた相手ネイサンは、ユダヤ人で大手の製薬会社に勤める研究者で、同棲をしている。そのネイサンが興奮して叫ぶ言葉「わかるかソフィー、俺たち死ぬんだ」が深い意味をもっているのだ。ネイサンはナチの犯罪を許すことができず、しかも分裂症をかかえこんでいた。彼が語る製薬会社の研究員も妄想でしかなかったのだ・・・・・。
ネイサンの部屋へ入ると、ナチ関係の本がいっぱい。ユダヤ人である彼はナチの犯罪が許せないのだ。
と物語を語ってもきりがない。原作が複雑に入り組んでいるのを少し端折って映画化したのだろう。いくつか理解しがたい部分がある。そういうことが重なって最初に見た、被害者のソフィーという理解になったのだろう。むろん、その部分はあるのだが、それほど人生はすっきりと割り切れない。囚人となったソフィー自身がかかえこんでいた「負い目」、のようなものが映画全編にざらっと流れている。それが見るものを息苦しくさせる。
終わって深夜ニュースを見ると、社保庁の失態を追及する特集が流れる。そこに出てくる人物の間の抜けた感じがどうしても不快となる。
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