万引の気配
ドレッシングが切れていたので、今、近所のコンビニへ買いに行った。
朝早いので、店内は勤め人と学生で賑わっていた。私の買った棚の隣に冷たいドリンクのコーナーがあって紙パックの牛乳が並んでいる。その前に白いジャンパーの若者が立っていた。目つきが鋭く異様な感じがした。
私はレジに行って精算したあと、ミルクも飲みたいと思いついて、陳列棚に引き返した。
若い男はさきほどと同じ位置に立っていて、レジ方向を見つめている。にらむような、厳しい視線を投げている。
明らかに、万引しようとしている。気配がびんびんと伝わる。止めときなと、私は心で叫ぶが、若者はレジにばかり気をとられていて、私の発するテレパシーには気づかない。
朝の混んだ店内で、二人しかいない店員はレジに詰めたままだから、店内奥で何があっても気がつかないとでも、その若者は思っているのだろう。
だが、ジャンパーのポケットに両手をつっこんだまま一歩も動かず、かつレジの動きを見つめているとなれば、怪しいとしか見えない。その態度では疑われても仕方がないことぐらい、悟ったほうがいいと私は思うが、どうやら若者はかすめとることしか頭にないようだ。
私とて、同じ位置にいつまでも止まったままというわけもいかず、ミルクを1パックとってレジに向かった。もういちど、心のなかで「やってはいけない」と叫んだ。
レジで金を払って、もう一度ミルクコーナーを見ると、まだ若者は立ってこちらを向いていた。
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