懐かしい作家、半村良
本日、護国寺の石川喬司さん宅へうかがった。SFの作家であり評論家である石川さんは日本のSFの生き字引のような方だ。若き日、日本SF作家クラブの世話人として、今や巨匠となった小松左京、筒井康隆、平井和正、そして故星新一、大伴昌司をサポートしてきたのだ。
最近、星新一のノンフィクションが出版されて評判になっている。そこで記録されている出来事の大半に立ち会っている石川さんに話を聞くため、護国寺の講談社近くにある石川さんのご自宅に、私は参上した。閑静な住宅街にある石川家の裏は崖になっており、崖上は御茶ノ水女子大のキャンパスとなっている。
30年ほど前、同じSF作家仲間であった半村良が近くに越してきたことがある。よく講談社や光文社に行くときに半村は石川邸を訪れたそうだ。そのときの面白い話を、石川さんは聞かせてくれた。
半村宅から石川宅までの近道は御茶ノ水女子大のキャンパスを通ることだが、半村はけっして大学内に入ることはなかった。両国高校時代、父を亡くした半村は大学進学を断念した経験をもっている。
あるとき、石川宅から半村家に向かうとき、石川さんは半村を連れてお茶大の裏門をくぐった。半村は居心地の悪そうな顔で後からついてきたよと、懐かしそうに語る石川さん。
それからしばらくして、半村が酒席などで「俺もとうとう大学に入ったよ」と吹聴していたという。ただし、裏口入学だがねと悪戯っぽく笑っていたといううわさを石川さんは聞いたそうだ。
仕事の種類だけでも30以上就いたという半村は苦労人であるとともに、人生の機微を知り尽くしていた。大学で学ぶ以上のことを彼は人生大学でいっぱい学んでいたよと語る石川さんの中に若い日の友情を、私は見た。
それにしても、半村良の「石の血脈」は傑作だった。
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