大脱走2
第二次世界大戦中のドイツで実際に決行された脱走作戦を描いた名作「大脱走」。スティーブ・マックィーン、チャールズ・ブロンソンなどオール・スター・キャストの冒険活劇として、公開当時高校生の私は興奮したものだった。これは実話を元にして作っているとは知っていたが、映画的脚色がかなりあるにちがいないと推定していた。
ところが、史実にかなり近い話だということを今回初めて知った。この脱走により、ドイツ軍の捜索は多大なエネルギーを割くことになったため、戦線にも影響が出て、結果的に連合国にとって戦局を有利に導いたとされる。史実では、この大脱走作戦は連合軍のノルマンディ上陸作戦(6月6日)と合わせて実行されたという。脱走した者の捜索にドイツ軍は7万もの兵士を投入することになった。まさに後方攪乱だ。
この時、ドイツ軍は50名もの脱走兵を殺害している。 映画でもほぼ史実通りである。逃走76名、うち射殺が50名、連れ戻されたのが12名。無事本国に戻ったのは僅か3名と言われている。
この犠牲者の顛末を中心に、「大脱走」の番外編がテレビ映画として製作されていて、前後編2本のビデオになっている。その作品「大脱走2」を昨夜見た。捕えられ射殺された50人はゲシュタポの手によって抹殺されたという説で物語が描かれていた。主演はスーパーマンで有名になったクリストファー・リーブ。
ドッジ少佐(リーブ)はルフト第三捕虜収容所での脱走作戦で脱獄できたもののドイツ軍の追手に捕らえられ、要塞ハルトハイム刑務所に収監されてしまう。そこには同じく脱走に失敗した仲間たちが収容されていた。そしてドイツ司令部はその厄介な捕虜たちをゲシュタポの手を使って抹殺しようと命令を下す。次次に仲間たちが殺されていく。
やがて終戦。しかしジュネーブ協定を違反したゲシュタポを許せないと、ドッジ少佐とその仲間は捕虜抹殺を指揮したヴィーレン長官以下の逃亡者たちを軍法会議に掛けて罪を償わせるため、捜査を開始するのだった。
「大脱走2」は前編が「脱出」、後編が「復讐」と副題がついている。前編は映画とほぼ同じ話だが、後編の戦犯追及のエピソードが興味深い。捕虜虐待はジュネーブ協定に違反するということは連合軍はもとより独軍も認識していた。知っていながら破ったのだからナチの戦犯たちは必死で逃亡を図るのだ。それを追及するドッジ少佐。
このテレビ映画は、「本編」とは別の面白さをもっていた。合わせて3時間近くなるこのドラマはいわゆるテレビドラマのスケールをはるかに抜きんでいた。
主演のクリストファー・リーブの躍動がまぶしい。この映画を撮ってから数十年後の1995年、彼は落馬事故を起こすことになる。彼は乗馬競争の最中に馬から転落、脊髄損傷を起こし首から下が麻痺した。彼は寝たきりの生活となる。
だがその境涯に負けず、リハビリテーションに専念し社会への再進出をはかって努力する。
そればかりか、妻とともに「クリストファー・アンド・ディナ・リーヴ麻痺資源センター」をニュージャージー州ショート・ヒルに開設し、同病で苦しむ人たちを励ましてゆく。その姿がおおぜいの人の感動を呼んだ。2004年、彼は52歳の若さで死んだ。
こういう生き方をするに至るリーブには、スーパーマンのようなヒーローだけでない深い人間観察に裏打ちされたドッジ少佐のような役柄を演じていたということを、覚えておこう。
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