目の錯覚
地図(ちず)の話ではない。地(じ)と図(ず)の話である。
私たちがものを見るときには、何かを背景として、それを見ていることが多いといわれる。見える図形すなわちカタチを「図」といい、背景を「地」という。英語で言えば、figureとgroundである。
これは「ルビンの壷」という多義図形である。1921年にルビンという人が発表して有名になった。この画は見方によって、壷になったり、人の横顔になったりするのだ。いわゆる騙し絵だ。
むかし、子ども美術番組に安野光雅さんに出演してもらったときだ。騙し絵を多く描いている安野さんに、自分自身の体験的騙し絵はありませんかと聞いたことがある。
すると、安野さんは右折禁止の表示がいつも気になるというのだ。
この6つ並ぶ交通標識の一番左が右折禁止のマークだ。車はまっすぐか左にしか曲がれないという2つの白い矢印がある。でもよーく見ているともう一つの黒いマークがその中に隠れていて、その矢印は右下を指しているのが浮かんでくる、と安野さんが指摘した。
うーむ。・・・たしかに、白い矢印でなく黒い矢印が、その気になるとあらわれるのだ。これを地(じ)と図(ず)の反転というそうだ。この眩暈のような感覚は、認知科学にとって重要な発見になったと聞いて驚いた。
この話を聞いて以来、私も街角を歩いていて右折禁止を見ると、右側に曲がれと言うもう一つの黒い矢印が、見えてしかたがない。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング