定年再出発 |
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夜飛ぶ飛行機にて ③
朝9時過ぎ、宿を出てサンジェルマンへ地下鉄で向かう。8号線でモンテピケまで行き、乗り換えてモンパルナスでさらに乗り換えてサンジェルマン・デュ・プレまで行くつもりだったが、途中モンパルナスで地下鉄のコントロールと呼ぶ検問に引っかかる。私の回数チケットに写真がついていないので罰金25ユーロを払えという。そんな理不尽なと抗議しても、若い係官は駄目だという。押し問答の末払わざるをえないことになり、あっツンが自分の不注意のせいだからと言って財布から金を取り出す。 係官があまりに偉そうなので、彼女は日本語で「ケチ」と憎まれ口をきいている。我が娘ながら悪態に呆れる。「いいの、向こうだって私たちのことをフランス語をろくにしゃべれないって馬鹿にしてるんだから」と平然としている。差別されたと感じたら日本語で言い返すことがあるという。 目的地で地下鉄を降りてサンジェルマン教会の出口から出ると見慣れた光景が広がる。このあたりを私は昔から好きで、海外取材でパリに来たときはいつも界隈に宿をとったものだ。学生街で画廊や古書店が多く、ちょっと御茶ノ水に似た雰囲気がいいのだ。何よりあの五月革命発祥の地である。1968年世界同時革命が夢想されたときの発火点だった場所だ。実存主義者らもよく溜まっていたというカフェ・フロールやデュ・マゴといった老舗も軒を並べる。 10年ほど前家族4人できたときもこのあたりにホテルをとった。あっツンは小学3年だったので正確には覚えていないというので、私がうろ覚えの記憶で宿泊したそのホテルを探すことにした。10分足らずで探し当てた。コンチネンタルホテルという小さな宿で、お洒落な佇まいであった。「ここかあ、私の通学路にあったんだ」と驚く娘。10年前のパリ行きが将来いつかフランスへ留学したいという望みを彼女に与えるきっかけとなったのだ。夢はきっと叶う――ドリームカムトルーを、彼女は信じている。 彼女の通う語学学校をとにかく見ておくことにした。大学街の一角にあって静かでいい雰囲気の学園だ。彼女は11時から授業ということでここでいったん別れて、夕方に再会を約束する。 別れしなに、「地下鉄の番号を間違えないように、カバンはしっかりかかえて、財布は他人に見せないように」とうるさく私に注意を与える。「バーロー、俺はこれまでにこの町へ何回来たと思っているんだ」と捨て台詞を吐いて、地下鉄で凱旋門方向を目指す。 地下鉄6号線でセーヌ川をわたりパッシーで降りる。ここに20年前にピカソのゲルニカ取材で来た時3週間宿泊した宿がある。いささか土地鑑があってシャイヨー宮殿まで歩くことにする。そこから見るエッフェル塔は絶景だ。 お昼近くになったので、バケットを買ってかじりながら、凱旋門までぶらぶら歩く。久しぶりにその威容を見てシャンゼリゼの坂を下る。観光客がいつもより少ない気がするものの、中国人の団体が目に付いた。世界は動いていると実感するのは、10年前に比べて中国人の団体が増えたこと、日本の円が安くなっていることだ。 シャンゼリゼ大通り坂下のグランパレ科学博物館で人の列ができているので、私も並んで入った。アレキサンドリアの水中から発掘された、エジプト古代文化展だった。すごい人気で会場は考古学ファンらしい男女でいっぱいだった。 陳列してあるものはルーブルや大英博物館にありそうなものだが、水中発掘の様子が映像で展示されていて、それがなかなか面白いのだ。観客も立ち止まってそれに見入ってしまうので会場は渋滞し黒山が次第に大きくなっていった。 午後3時、さすがに疲れてセーヌ河河畔で休憩。風が強く波が荒い。さすがにカップルもいない。ひとまずホテルに戻ることにした。コンコルド広場から地下鉄8号線でバラールに向かう。ホテルの114号室で仮眠をとる。 夜7時に娘のあっツンは現われた。授業が終わった後一旦寮にもどり、準備をして私のところへ来たという。何の準備だと問うと、何も言わずにやり。嫌な予感がする。 日本食の美味しいものが食べたいというので、エッフェル塔そばのノボテル・パリホテル にある「弁慶」に連れていくことにした。以前、私はここで食べた鉄板焼が美味しかったことを思い出したのだ。ノボテルはセーヌ河のほとりにあって夜景が美しい、元の名はニッコーホテルだ。 ここでセーヌの夜景を見ながら、ワインで成人のお祝いをした。 来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
by yamato-y
| 2007-01-14 20:34
| 登羊亭日乗
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