古き良き時代
大伴昌司の映画のシナリオを現在開発中である。シナリオ作家は30代前半の女性。真面目で少し跳んでるところがあっていい人だ。
ただいま、ロングプロットの4稿まであがった。最終の直しをやっている。その彼女が書いた文章にちょっと引っかかった。
物語りの最初のシーン。現在の渋谷駅前から始まり昭和44年に時代がさかのぼるのだが、その場面でのト書きがやや気恥ずかしいのだ。
「レトロな風景、レトロなファッションだが、行きかう人々は生き生きと活気にあふれている」と昭和44年の場面で記されているのだ。
30代未満の男女と話していると、60、70年代の青春ってエネルギーに溢れていてかっこいいですねと、羨ましがられることが多い。
どうやら、ものは今ほどなかったが、熱い情熱を真摯に男女がぶつけあったと理解しているようだ。そう思っていただいているのにわざわざ冷水を浴びせることもなかろうと、にやにや笑いながら聴くというのが常だが、シナリオに書き込まれるとなると、よーく考えなくてはなるまい。
今の若い子がだらしなく自分勝手に生きているが、私らの若いころだった昭和45年前後はもっとみんな生き生きしていたぞと、胸をはって言えるだろうか。
ここだけの話、先日放送された妻恋コンサートに集まった中高年の顔は暗かった。彼らはまさに45年ごろに青春をむかえた世代だ。けっして明るい過去を生きてきたという表情ではなかった。拓郎もハッピーとはみえなかった。
私の場合、若い世代から羨まれると、一応リップサービスで「楽しきかな、わが青春」と謳いあげるが、一人になると自己嫌悪に陥るというパターンだ。
森巣博の本で教えられた言葉がある。
THE GOOD OLD DAYS THAT NEVER WERE
(存在しなかった古き良き時代)
あの時代は懐かしいが、若者が想像するほどハッピーでもなかった。良き時代というふうに美化しておきたいが、実際はむしろ、青春地獄篇だった。
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