「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」
セルジオ・レオーネという監督がいた。マカロニウェスタンの名匠とは聞くが、あまり見たいとは思わなかった。たしか「荒野の用心棒」は黒沢の「用心棒」の剽窃と批評され、さらに黒沢プロダクションから訴えられるなど、なんとなく物真似のB級映画監督だというぐらいにしか、私の中では位置づけされていなかった。
衛星映画劇場のワタナベ支配人から、「これなかなかいいですよ」と紹介されたのが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」だ。
1923年、ニューヨークの貧しいユダヤ人街で、ヌードルス、とその友の4人の少年たちはバーを根城に悪いことにうつつを抜かしていた。ヌードルスがひそかにあこがれているのは女優を志しているデボラだ。そんな折、彼らの前にマックスが現れる。彼らはマックスの手引きで禁酒法施行を利用して稼ぐことを知り、儲けた金を共同のものとして駅のロッカーに隠しておく。他の少年ギャングとの抗争中幼い仲間が殺される。怒りに燃えヌードルスは相手のボスを刺し殺し、彼は刑務所に送られる。
6年後、出所したヌードルスを待っていたのはかつてのワル仲間たちだった。ヌードルスもさっそく仲間に引き入れられる。ダイヤモンド店を襲撃したり、多発する労働争議に介入したりして、着々とギャングとしての勢力を拡大していった。しかしヌードルスはどこか心が満たされない。デボラの愛がほしかったのである。・・・
と、このユダヤ少年たちの人生が60歳になるまでの過程が劇的に描かれるのだ。画面が重厚だ。圧倒的存在感のある風景が次々に登場する。その画面すべてをレオーネは掌握している。と思わせるほど緊張感のある画像だ。1984年当時で制作費4000万ドル、半分が町の風景を作り上げるのに費やしたといわれる。
さらに配役がいい。ヌードルスを演じるロバート・デニーロ、マックス役のジェームス・ウッズは実にうまい。強いて難を言えば、デボラ役の女優がたいしたことはない。デボラの少女を演じたジェニファー・コネリーがいい。そして、エンニオ・モリコーネの音楽がどことなく物憂げで心に沁みる。ポピュラーな「アマポーラ」ですら悲しみに満ちてくるのだ。
レオーネはこの映画を撮るのに10年かけた。そして、完成からほどなくして60歳で早世した。この1本で彼は映画史にその名を残した。もし、この週末退屈だったら、この映画を見ることを薦める。長時間(4時間もある)、酒でも飲みながらゆったり味わうには最高の映画だ。
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