駅頭にて
7時7分、新潟発特急「朱鷺」に乗った。東京行きの始発新幹線だ。通勤電車のようで、途中の駅からも多数乗り込んできた。新潟平野を一直線で突っ走り、山間に入り、浦佐を過ぎると山霧がたちこめていた。冬が近づいている。
東京駅に着いたのは9時37分。駅は朝のラッシュが残っていた。
降りた5号車の出口の脇に黒い群れがあった。そこだけ町の光景と合っていない。階段に向かって歩いてゆくと、彼らのそばを通る。近づくと、彼ら4人が皆つながっていた。腕に光るものがはまっている。
はっとした。ドラマでは見たことがあるが、現実の護送される風景というのは初めて見た。
先頭の大きな男は傲然と天井を見ている。凶暴なものを目に宿していた。後尾の小太りの男はおどおどしていた。恥ずかしさで消え入りそうな風情だ。泳いだ視線が私に向けられた。一瞬目が合った。
全員、年のころは30前後か。髪は短く黒いシャツか白い上着を着けている。いかにも暴力団風のスタイルだ。
罪を犯した者ということは知ったうえで、なぜか彼らが哀れに見えた。囚われることの屈辱、自由を奪われた悲しみ。傲慢な男にも気の弱そうな男にも励ましてやりたくなった。どんな経歴を重ねてここに至ったかは分からないが、その罪はすべて彼らの責任であるのだろうか。止むに止まれぬ事情でここまで来たのではないか。私は勝手に彼らの境遇を思いやっていた。
なぜか、そのとき私は永山則夫のことを考えていた。私の目は父親のそれになっていた。
車中で、カズオ・イシグロの『私を離さないで』を夢中で読んでいたからだろうか。
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