山道に矢印
ツヴァイクの道を降りてくると、処々に赤いチョークの目印があった。SHというイニシャルと矢印だ。そのそばにはおが屑と白いアクリル片を混ぜたような粉末が撒かれてある。
ハイキングのグループの仕業であろう。なんとなく不愉快だ。仲間のための目印かもしれないが、デカデカと書かれてあると、もみじ山が汚されたような気がしてくる。おまけに粉末は溶けることもなく残留しそうで、これも耐えられない。
ハイカーらは気晴らしで山にやってきて、その日だけの楽しみで「ゴミ」を残していくのだろうが、置いていかれた住民にとってはたまらない。迷惑な話だ。
ストルガツキーの「路傍のピクニック」も、おそらくこういう世間話が元になっているのではないだろうか。
宇宙人が飛来する。地球人とは関わらないまま、地球を楽しんで地球を去った。超文明をもつ宇宙人たちは地球に“ピクニック”のゴミを残した。そのゴミは地球にとっては厄介なものとなる。
タルコフスキーはストルガッキーのこの物語を読んで、ゴミを捨てた場所「ゾーン」に関心をもった。廃墟に放射能が満ち溢れていると幻視した。
映画「ストーカー」が製作されたのは1979年。それから7年後の1986年4月、チェルノブイリ事故が起きた。
爆発した4号炉をコンクリートで封じ込めるために、のべ80万人の労働者が動員された。4号炉は巨大なコンクリートで覆われることになる。その構造物は「石棺」と呼ばれることとなった。まるで、ゾーンそのものとなった。タルコフスキーはそういう出来事のはるか以前にこの悪夢を予知していたとしか思えない。
因みに、タルコフスキー自身チェルノブイリ事故が起きた1986年の年の暮れ、亡命先のパリで客死した。享年54。
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