俗耳に入りやすいトラウマ
精神科の医師が書いた『狂気の偽装』という本を読んだ。四月に出たばかりの新刊だ。著者、岩波明は松沢病院などに勤務し東大医学部精神科で助教授などを経験して、現在は埼玉医科大学で教鞭をとる、現役の精神科医である。
今、日本では「心の病」が増えている。だが、それはある種作られたブームであることが多いという。無責任な精神科医や心理学者による架空の造語が飛び交い、マスコミがはやし立てていると、岩波は見ている。
その中にPTSD(心的外傷後ストレス障害)がある。これは岡田美里が離婚会見のときに語って有名になった。彼女は実父から子供の頃よく暴言を受けた。その後流産を契機にPTSDが発症したと申し立てたのだ。夫が大声を上げるとそのイメージが重なって強い恐怖感に襲われるというのだ。
岩波は身体的な暴力行為がないにもかかわらず、PTSDを発症するとは考えられない。このケースはPTSDとはいわないという。
本来この障害は戦争と関連して生まれた概念だ。1次2次大戦、ベトナム戦争のあとに、戦争が人間の精神を破壊することから、起きてきた病だ。生死に関わる過酷な体験という必須の条件があるのだ。だから岡田のように暴言でPTSDとなるなどありえない、と岩波は言い切る。
まことに理解できる。近年、カウンセラーとか精神科医とかがワイドショーなどに出演していろいろな心の病を規定することが多くなっていることに懸念を感じていたが、やはりそうなんだという思いがする。しかもカウンセリングによって作られ進行する心の病があるそうだ。
戯言のように飛び交う心の病を刷新するため、著者はあのフロイトですら、その権威を疑ることから説き起こしていることに、ほとんど感動する。今、半分読んだ。週末読了して、もういちどこの件について書くつもり。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング