天才アラーキーの見方
木村伊兵衛の番組制作で、昨日写真家 荒木経惟さんを赤坂乃木坂で撮影した。
木村の写真をあれこれ見てもらって荒木さんの所見を聞いてゆくのだ。木村を語りながら期せずして荒木さんの写真論が浮かび上がって面白かった。いくつか卓見を聞いたがその一つだけ紹介する。先日、このブログでも紹介した本郷森川町の作品について。
この写真を撮ったネガを見てゆく。その街へ入ったところから歩きながら撮影していることがネガのコンタクトから読み取れる。まず、荒木さんはそれを指摘する。
2コマか3コマで、ぽつっと呟く。
「名人には人が集まってくるんだよなあ」
言われてみると、画面に最初人影がないが、2つめ3つめから町を行き交う人が出てくる。むろんこれは仕込んだ人物でなく偶然通りかかった人ばかりだ。だが、次第に賑やかになってゆく。
そして、一番人が集まりいい形で配置されているところで、あの名作の場面となる。
登場人物は皆ばらばらの方向を向いていて、視線も定まらない。ただ、何かあったといわんばかりの不穏というかただならない時間が流れている。
名人というのはこういう不思議な時間を招き寄せるのだと、荒木さんは語った。
つまり、名人がカメラを構えるその時間は、別時間(アナザータイム)を引き寄せる。まるでシンクロニシティではないか。
荒木さんもそういうことを呼び寄せるお方と私は見受けた。荒木さんは木村の生家から歩いて10分ほどのところで育ったそうだ。木村の気分を共有するのは難しくないのだろう。
この他、面白い言葉がポンポン飛び出た。ぜひ番組を見て欲しい。
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