澁澤龍彦
私は一枚だけリトグラフィーを所有している。
ハンス・ヴェルメールの少女だ。昭和48年か49年に、渋谷公園通りにあったリカビルの地下の骨董店で購入した。会社へ入ってからの貯金もすっかりつぎ込んで買ったのだ。
当時、私は澁澤龍彦に夢中だった。正確に文章を理解していたわけではないが、制度化された社会がたまらなく鬱陶しく抜け穴を探していた。思想的には対岸にある三島由紀夫がなんだか気になっていた。その彼が高く評価していたのが澁澤である。澁澤自身、政治的にはニュートラルに見えたが、サド裁判で反権力的に行動しているのがまぶしく思えた。
そして、彼の著作を目に通すと、いわゆる反社会的な文言、画像が次次に飛び出てきた。
私は目が眩んだ。サド、ロリータ、ニンフェット、アンチユートピア、仮面、エロティシズム、メタモルフォーシス、バタイユ、ユイスマン、人形愛、オカルティズム、シュルレアリズム、…・
たしか、まだパルコのリブロがなかったはずだ。澁澤が引用する本や画像を求めて、近代美術館や神田を彷徨した。そして、ヴェルメールを見つけたときほとんど夢中で購入した。
結婚しても、子供が生まれても、私の部屋の隅に立てかけた。男の子がいやらしいものを見る目つきで、そのくせ好奇心ありありで、この絵を覗き込んでいるとき、私は内心狂喜した。やった、俺は子供に悪影響を与えていると。
ところで、澁澤はタモリに似ている。前から思っていたが、久しぶりに澁澤本を見て確信した。素顔もそうだが黒めがねをかけるとますます似ている。
ということは、タモリは美青年の部類に入るのか。澁澤はまさに文壇の孤高の美青年といわれたのだから。二人とも爬虫類系の顔にして子供を持たない。
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