春の嵐か、桜の花か
午後。白金台5丁目まで我が家から歩いて3分。国立自然教育園に嵐のなか足を運んだ。広い園内には、私のほかに数人しかいない。潔い風景がそこここにある。お花見もバードウォッチングも独占状態。全部、私一人のためにある。たとえ強風にあおられても、雨に叩き付けられても、この春の嵐、居心地はけっして悪くない。
それにしても、庭園内は荒廃していた。何と多くの古木が倒壊しているか、どうやらこの冬の降雪と秋の颱風が甚大な被害を生み出したようだ。樹齢200年以上の椎の木や松の木が根元からばっさり折れている。小楢の林もかなりの数が倒れていた。
嵐のなかの本日の出動の目的は園内中央のひょうたん池ほとりの桜狩り。染井吉野の見物。エントランスから一気に池まで突き進む。雨風をものともせず、どしどし歩いて池まで行くと見事な桜並木が池の水面に大きな枝を広げていた。ピンクの花びらのせつない美しさ。開花してまもないからか、花びらはしっかり枝とつながっていて、桜はその奢りのような華やかさを木全体で誇っていた。誰もいない。この美しい風景を愛でるのは私ひとり。雨風は一段と強くなる。
ひょうたん池のS字遊歩道を行くと、正面の水辺に大きな白い羽ばたきが降りてきた。アオサギだ。上面が灰褐色、頭部が灰色の羽毛で被われている。頭部の飾り羽が目立つ。バッグからカメラを取り出して、この大型鳥を狙った。この教育園に通うようになって3年ほどになるが、これまででもっとも接近した鳥観察。少し興奮した。
さらに近づいた。サギは逃げない。ゆったりと水面の小魚を物色している。私は矢継ぎ早に、シャッターを押す。
サギが私の方を見た。何か言いたそうな風情だと思ったのは、意識の過剰だろう。サギは私を無視して、飛び立った。
得をしたような気分で出口に向かう。すみれが薄紫の可憐な花をたくさんつけていた。その傍にカタクリの花がピンクの大きな花弁をゆらゆら垂らしているのに出会った。これまでも図鑑では見ていたが、実物の開花に出会うのは初めて。
桜見物のつもりで自然教育園に入ったが、それ以上の春の風景にいくつも出会って、十分堪能した。
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