情報戦
昨日12月8日は、パールハーバー奇襲の日、日米が開戦した日である。NHKスペシャルもそれにちなんだ番組を編成した。「日米開戦への道」。
あの戦争が終わって68年。英米では当時の機密文書のいくつかが公開となり、そのなかから今回の番組のヒントやさらに物証まで発掘して、開戦記念番組のとして体裁を整えたようだ。
本来、アメリカから輸入する石油に頼っていた日本が、なぜ和平を捨ててアメリカとの戦争に突入したかということを情報戦から見ていくという趣旨。加藤陽子の名著「それでも日本人は『戦争』を選んだ」の趣旨とよく似ている。番組が始まって34分ほど、当時の国際情勢の説明で時間が割かれ物語がなかなか進行しない。番組のもつ展開力が弱い。おそらく戦無世代が増えたので基礎知識を注入し説明することが優先されているのだろう。歴史の勉強、教養の確認。近年のNスペの特徴だ。
90年代のNスペはもっと勢いがありかつ取材も編集も荒かった。いささか緻密さには欠けたが、見る者の心を掴むスピリットがあった。それに比して、当節のNスペはカットレベルのつなぎは精確だが大きな流れにおいて、迫力を感じない。
おそらくこの企画は、今喧々囂々と取り沙汰されている「秘密情報保護法案」を意識して立てられたものだろう。そこに時代的、今日的意味を見出して作っているのだろう。かつて軍事機密情報というものはこういうふうに扱われ、その後封印されて保護されることになるが、けっして永遠の措置ではない。ある一定の時期を経れば解禁されなくてはならないという欧米の民主主義国のマナー。機密情報を保護する法律を作るというのなら、為政者はこういうマナーをわきまえているべきであるし、国民はまたそのことを要求するべきではないか。そういう作者の「声」がかすかに聞こえてくる。
もっとも大きな不満。研究者のインタビューがあまりに作者の文脈に合わせたものばかりで短い。短すぎる。もっとその文脈から外れたことまで含めて広く研究者の声を響かせるべきであったのではないだろうか。
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