金焦土
65歳の誕生日を過ぎてばたばたと周囲が変化していく。
新しく担当する「課外授業」の来年度の予定を立てるために、60本の企画書を精査するということがこの2、3日続いている。ただ読むだけでなく、実際に企画を作ったディレクターたちと面接して、その動機や仕掛けなどを問いただしながらだ。手間と暇がかかる。昨日だけで5組の制作会社の人たちと会った。
6時を過ぎて店仕舞いにするかと思っていたら、庶務係から退職の手続きについて説明したいと声がかかった。応じて、書類の検分となる。
3つ大きな事務処理が必要だということを知った。健康保険、年金手続き、現在の身分の喪失手続き。ハローワーク、出版健保などへ出向いて行う諸手続きを聞いていたらすっかり戦意喪失してしまった。とてもじゃないが、本来業務に専心する余裕などない。とにかく今週から来週にかけて走り回ることになるだろう。
ほとほと疲れて8時過ぎ帰宅。風呂に入って、ハイボール一杯飲んだら疲れがどっと出た。南木佳士の新しく出た小説を読もうと思っていたがとてもその気にならない。そのうち睡魔が襲う。
午前3時。厠のために目が覚めた。
床にもどったが眠れない。起き出して読書することにした。石田波郷の『波郷句自解』を手にした。
戦時中から敗戦後までの時代の句を選んである。
22年1月という日付の句に目がとまった。
束の間や寒雲燃えて金焦土
敗戦の国土に冬の陽が燃えている。みじめな焦土でもほんの束の間金色に輝く。波郷はこの句を重く尊いと解している。
目黒の白金台地から遠望すると、美しい夕景がここ数日ある。そのことを思った。深夜、夕景を思いながら、これからの人生を思って暗然とする。
波郷句はすべて暗いわけではない。
寒卵薔薇色させる朝ありぬ
こういう心根で朝をむかえたい。
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