小松左京を宇宙へ送り出す会
29日午後1時半から、ホテルニューオータニの鳳凰の間で、小松左京を宇宙へ送り出す会が盛大に行われた。大広間に参集したのは500人を下るまい。交友のあった編集者や作家たちだから年配の顔が大半であったが、若いSFファンもちらほらいた。会場には小松さんをしのぶ写真や著作が展示してある。中学時代の写真にはラグビーで神戸大会で優勝していた姿があった。京大文学部に進学して、あの高橋和己らと同人誌をやっていた頃の写真もある。
冒頭のあいさつは、漫画家の松本零士さん。続いて、臨終に立ち会った民族学者の石毛直道さんが、小松さんらしい死であったことを報告。感銘深いお話だった。そのあと、スクリーンに旧友の桂米朝師匠が登場。「もうすぐ行くから、そんなに待たすことになるまい」と暖かい弔辞を述べていた。全体に偲ぶ会独特の湿っぽさがまったくない、いい会だった。
この会でお会いしたい人がいたのだが会場が広すぎて分からない。そこへ石川喬司さん。日本SF作家クラブの第1世代で、小松さんの盟友だが、まったく年齢を感じさせない。いつもの温順な姿に安堵した。星新一、小松左京が逝った今、日本SFの黎明期を語るのは石川さんと筒井康隆さんしかいないだろう。前から、先生の回顧録を記録したいと願っている。
松任谷由美さんの姿もあった。この席上にはどうして参加しているのですかと質問すると、昔映画の主題歌を担当したことがあってという返事。SFはお好きですかと振ると、「ええ、好きです」と楽しそうに答えた。誰も、彼女の存在に気づいていないようだ。単独の取材でユーミンの謦咳に接することが出来たのは幸運だった。
小松さんを宇宙に送り出すイベントが、スクリーンのうえで始まった。映像で小松さんの魂を乗せたロケットが宇宙空間へ飛び出していく。いろいろな映像がコラージュされているのだが、冒頭の晩年の小松さんの映像はどこかで見たことがある。それもそのはず、私の作った「21世紀を夢見た日々~SF作家クラブ50年」のなかから引用と、テロップが出た。私にとっても思い出深い番組。結局、小松さんのテレビの取材はあの番組が最後となったことになる。車椅子暮らしになっていたが、明晰なSF文化論を展開した。往年のデブっちょがしぼんで哲学者のような風貌になっていた。親友の高橋和巳と並んでも遜色ないシリアスな面差しだったことが忘れられない。この番組は、ポップカルチャーを論じたETV特集の名作だと自画自賛。
3時過ぎ、賑わう会場を後にした。
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