会津の殿様
サンダンス映画祭の審査員が来日しているので来ませんかと、パーティに声がかかった。少しでも審査に有利になるかなという下心もあって参加した。パーティには若手の映画監督やバイヤー、役者など映画関係者が集まっていた。準備した名刺を10枚ほど配って、「KIYOMOTO」の宣伝に勤めた。
この会を主宰したのは、映画祭日本事務局。事務局長の松平さんは、画家小早川秋聲のときにお世話になった人物。この人の伯父さんは戦時中侍従長として活躍しており、小早川とも親しかった。その経緯を知って、身内を探したところ松平さんに行き当たったのだ。まさか同じ会社にそういう人物がいるとも知らず驚いた。
松平さんは温厚柔和な人で、いつも笑みを絶やさない。気配りの人だ。昨夜も、パーティのホストとしてあちこちに顔を出して、会の円滑な進行をはかっていた。
小早川のときにはお世話になりましたと礼を申し上げると、「御役に立つこともあまりなかったようで、申し訳在りません」と丁寧な返事。懐の深い大らかな人だなあと感心。
隣にいた部下の女性が、松平さんはこの間のお祭りにお殿様の役で出場したんですよと打ち明ける。何の事かと聞くと、松平さんの先祖は会津若松藩の藩主だというではないか。考えてみれば、松平という名前は徳川ゆかりの名前だから、さもありなん。
9月22日から24日まで会津まつりが開かれる。子どもたちが参加する「提灯行列」で幕を開け、メインイベントは中日の「会津藩公行列」。大名行列や白虎隊出陣行列が市内を練り歩く。その藩公の役として松平さんは今年参加したそうだ。
目の前にいるこの人物の先祖が藩主で、あの白虎隊の悲劇を受け止めた松平容保かと思うとなんとも言えない感懐が湧いて来る。ところが、当の松平さんは会津祭の様子を聞かれても、「今年から父に代わってやるようになったのですよ」と照れるばかり。
ケータイに会津祭の写真があるというので見せてもらった。鎧、陣羽織を着けて藩公に扮した松平さん。明治維新の元勲たちの写真集で見た、会津公松平容保そっくりではないか。
松平さんは照れ笑いを浮かべるだけでおっとりしたものだ。お殿様といっても、松平さんの声はしゃがれていて大道香具師のようで愛嬌がある。元はドラマのプロデューサーだから芸能番組にも通じている。なんだか、このお殿様が好きになった。
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