5月5日、大磯はうす曇り
6時前に目が覚めた。いくぶん肌寒い。
寝床で、川本三郎の『映画を見れば分かること③時代劇のベートーヴェン』を読んだ。2008年以降の映画が取り上げられているから、ガイドにちょうどいい。特に邦画の新しい作品は情報があまりないなか、川本さんは丹念に試写会に出かけてチェックしているから有り難い。難をいえば、川本さんの若い映画人への評価はやや甘い。けなげに映画を作っているというだけでほだされているのじゃないかと思われる点がないでもない。だが、欠点をあげつらうのでなく、美点を見出そうとする姿勢は、老年期に入ってきた同世代として分かる。
とりあえず気になった映画をここにメモしておこう。
「丘を越えて」(高橋伴明)、「歩いても 歩いても」(是枝裕和)、「きみの友だち」(廣木隆一)、「コドモのコドモ」(萩生田宏治)、「俺たちに明日はないッス」(タナダユキ)、「百万円と苦虫女」(タナダユキ)、「いけちゃんとぼく」(大岡俊彦)。
邦画以外では、川本さんが推薦する作品と私の気に入ったものがかなりかぶっていた。
「ラストコーション」、「シークレット・サンシャイン」、「グラン・トリノ」、「街のあかり」
川本さんの映画評は、ファン意識丸出しのところがいい。特に映画俳優への思い入れを語るときの無邪気無防備な言葉。くだらない薀蓄に懸命になるところ。どーってことのない地方都市のありふれた風景への思い入れ。などなど、読んでいるうちに映画が見たくなったり、電車に乗って出かけたくなったりする。
5月5日は毎年晴れる。特異日だと思っていたが、今年はうす雲っている。太平洋側でこんな天気だから、北陸敦賀はもっと陰鬱かもしれない。母の納骨の日だから少し悲しい。
2年前に昇天した母の遺骨は分けて、山中にある先祖伝来のお墓と、敦賀の教会の共同墓地に埋葬することになっていた。山中のほうは、私が去年納めてきたが、共同墓地のほうは本日に末弟によって行われるのだ。あいにく、私は出席できないから、遥拝(他に適当な言葉が見つからない)する。
川本さんのあとがきに、2008年に亡くなられた妻恵子さんのことを記している。
《早いもので家内が逝って今年で3年になる。遠ざかれば遠ざかるほど、家内が近くなるような気がしてならない。》
川本さんの奥さんへの思いをつづった記録が去年出版されて読んだが、その哀悼は深いと思った。それほどではないが、私とて母を失ってから、母のことをそれまで以上に考えることが増えた。死者というのは、不在ゆえに近い存在になるのかもしれない。
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