読み止しの、読みかけの
雨が降りかけた昨夕、白金のホテルのロビーで人と会ったがけったくそが悪かった。どことかの商事会社の重役だったということで、私はあれを知っているとか、あいつは私のポン友でとか、自慢ばかりする。用件になかなか入らず、どこの出身かとか名前の由来はとかどうでもいいことばかり聞いてくる。暗に、自分の出身地や母校のことを聞いてくれと言わんばかり。大学で講義をやった後でもあるし軽く疲れていたこともあって私はむくれた。顔に出ていた(と思う)。用件をすますと、さっと立ち上がってロビーを後ろも振り向かず出た。
こんなことで貴重な時間を費やせるかと、居直った。向さまは無礼な若僧と思っただろう。昭和12年生まれが何だ。財界の大物が何だ。むしゃくしゃしながら、日吉坂を上るとブックオフがあった。
新書でも買うかと店に入り、棚を漁る。斎藤環の『関係する女 所有する男』をぱらぱらと読む。内田樹のフェミニズム批判を論ってあるの記事見つけ、しばし読みふける。2009年刊行で定価740円に対して値札は400円となっている。ならまあいいかと購入する。
夜もその新書を読む。明けて、今朝はディビッド・ロッジの『小説の技巧』に手を出して3章ほど読む。時間の移動(タイムシフト)の節が映像のフラッシュバックを考えるのに分かりやすい話だった。
10時になって図書館に借りていた本の返却に行く。午前中だというのに館内はおおぜいの利用者がいた。村上春樹訳のレイモンド・カーバーの晩年の作品集『象/滝への新しい小径』を見つける。短編「親密さ」をその場で読んだ。しゃべくりの面白さに引かれ、この短編集を借りることにした。他に、阿部昭『あの夏』、渡辺容子『左手に告げるなかれ』、『ジャーナリズムと歴史認識』、中上健次『化粧』そして、村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』。帰りの権之助坂途中にあるコーヒーショップに入り込んで、借りてきた本を読む。
1時間はいただろうか。気がつくと午後1時を過ぎ、店内は混みあってきた。どの本も読みかけ読み止しにしたまま、手提げ袋に詰め込んで駅に向かう。
蒸し暑い日曜は過ぎていく。
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