ユン監督の才能
円舞曲(わるつ)を企画したときの話を、先に書いた。
その後、思い出したことがある。
昨年の夏、青山のレストランで監督とホンさんと私が食事をしていた。
その折、共同で制作しようというドラマの話題になった。会話の途中で、
ひらめくものが私にあった。かたわらのナプキンを手にとって、それに
タイトル「円舞曲」と書いて、ホンさんに見せた。私はひらがなのルビを振る
タイトルが気に入っていたのだ。
この紙ナプキンは、その時の忘れられない出来事の証として、今もノートに
保管してある。
ドラマ「円舞曲」の設定にヴァイオリンの修理ということを置いた。ヴァイオリンの
修復技術というものは常人の想像を越えるものだ。古い昔のかなり破壊されたもの
でも、修理によって完全に復元できると、物の本で、私は知った。
それをユンさんに私は伝えた。すると――
「こわれたヴァイオリンは完全に直すことができても、傷ついた心は完全に戻らない、
ということがありますよね」と静かに言った。
私はハッとした。まさかそういうことを意図したわけでもないが、ユンさんは
そういう思いに
「飛躍」したのだ。
お話を「作り上げる」才能、つまりメロドラマを語る天性をユンさんに見た気がした。
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