黄色い涙
幻といわれた腐朽の青春テレビドラマ「黄色い涙」19巻の映像を入手。昨夜、6回分を連続視聴した。
漫画家永島慎二。彼の貧乏時代を描いた同名の自伝漫画「若者たち」が原作である。たしか、「ガロ」に連載されていた作品だったと思う。
永島とおぼしき主人公村岡栄介に森本レオ、その周りにうろつく売れない画家下条アトム、冴えない小説家志望岸部シロー、歌手を夢見るバーテンダー長澄修が扮している。制作は名古屋局のドラマ班であろう。脇の役者は、名古屋人が多い。「中学生日記」に出ていた顔だと記憶が甦る。シナリオはまだ売れていない市川森一だ。
このドラマは昭和49年頃に放送されて、1、2回は見たと思うが、全部はない。当時はそれほど評判にならなかったが、近年、「トキワ荘」など漫画文化が注目されるようになって、ファンのなかでは評価が高まっていた。加えて、近年この主題が映画化され、嵐が出演するなど話題になる。だが、映画はいわゆるアイドル路線の作品だろうから、あまり見たいとも思わない。第一、二宮和也とか桜井なにがしが貧乏暮らしを演じても嘘くさい。最初に映像化された、テレビ連続ドラマを見たいとかねがね思っていた。
見たいと思っても、40年代の番組はほとんど残っていない。2インチのビデオを使用していた時期で、高価なビデオは繰り返しダビングして使い回されたため、ほとんど幻となっている。私が見たのは、普及する前のオープンリールの家庭用民生機で収録されたもので、奇跡的に19巻があった。おそらく出演の関係者が高価なビデオレコーダーを所有していて録画したと思われる。
物語の時代は、新幹線の営業が始まった昭和38年。オリンピックの前年であり、少年サンデー、マガジンの発行されて4、5年経った時代である。舞台は阿佐ヶ谷の裏通りにある森本のアパート、喫茶店のシップ、一膳飯屋のさかえ。まるでトキワ荘と近所のラーメン屋松葉とそっくりの設定だ。
コーヒーの80円、牛丼の100円にも事欠く主人公たちの貧乏で悲しい友情の物語だ。番組の作られた時期が物語の時代から10年も経っていないせいか時代考証や風俗、家具がよく出来ている。スタジオセットのちゃっちさはあるもののリアリティに目を奪われ、ストーリーがなかなか頭に入ってこないのが、ちょっと厄介だった。6畳一間のアパートといいブルーマウンテンを飲ませる喫茶店シップといい、そこに出て来る光景は、昭和48年から52年まで暮らした私の荻窪時代を髣髴とさせ、ディテールに見入ってしまった。ここに出て来るさかえの店員の児島美ゆきがとてもいい。あの頃、たしかにこんな女の子がいた。
今年の5月に放送した「ザ・ライバル~少年サンデー少年マガジン物語」でもドラマを作ってみたが、あの時代の「懐かし感」がとてつもなく心地よかった。もう一度、ああいうドラマを作ってみたいと、この「黄色い涙」を参考視聴しようという気になったのだ。今、やってみたくて仕方がない主題は、藤子不二雄Aの名作「愛・・・しりそめし頃に・・・」だ。
とにかく、銀河ドラマ「黄色い涙」全19巻をすべて見ようと思う。
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