夏の朝ハートウォームワンダーランド
涼しい朝だ。タオルケットを思わず首まで引き上げた。寝室の窓を開け放しておいたら、朝の冷気がすっかり入り込んでいた。やはり今年は冷夏らしい。この時期になればうるさいぐらいの蝉しぐれが今年は貧弱だ。津軽出身のイセさんが先日帰省したら、東北は驚くほど寒かったと言っていた。飢饉のときに吹くヤマセが出ていたらしい。
昨夜は遅くまで川上未映子の『へぶん』を読んでいた。この人の文章は初めてだが、文芸誌の巻頭にあったので読むことにした。すると、実に暗い内容であった。中学生のイジメの話だ。このところ暗い本にはうんざりしているから、止めようと思ったものの、話の展開に巻き込まれ、というかイジメに対する主人公の逆襲か逆転を見届けたいとムキになって読み進めた。結論からいうと、この小説はそういうカタルシスを得られないものであった。斜視でどんくさい男子と硬い髪の毛デキタナイと思われている女子の二人が、クラスメートから苛められるという場面は不快で不愉快でたまらないから、できるだけ飛ばし読みしたから物語のお話はいまいち理解できないままとなった。
そして今朝。
もう暗い話や話題から脱却しなくてはと決心した。図書館から借りた『世界のおわりとハードボイルドワンダーランド』をぱらぱらと読む。最初の3章を読んだが辛気臭そうだったので放棄。英文学者深瀬基寛の伝記が目にとまったので走り読みする。面白い。エリオットの詩「そこはかの道」の解釈について書かれてあった。
私の行く道というのはどこまでも軽く巧みな道で俗人でもなく仙人でもない細くかぼそいそこはかの道だと、エリオットが書いている。〈そこはかなる道 不実の道〉
不実の道とは信仰をもたない帰依などしない悟れない立場でありながら、刹那的ものを追い求めようとしてふっと消えていくものを、カタチにしようとする道だと説いている。
深瀬は芭蕉が実践したように詩歌は軽いものでなくてはならない、軽さこそ詩心のまん中にあるものだとつぶやく。そうだ。軽さだ。この玄妙な人生を軽さで捉えなくてはいけない。この文章を閉めたあと、もう一つ書こう。マイフェバリットソングだ。
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