空へゆく階段
参加している俳句結社の同人誌が届いた。そこに田中裕明という平成16年に死去した俳人の名前をみた。
その人の句。
空へゆく階段のなし稲の花
たたずめる我と別れて秋の風
何の知識もなく読んで惹かれた。透明でありつつ力強さがあり、その矛盾が造作なく同居していることが魅力に思えた。
さらに、経歴を読んでみると、死因は肺炎だが5年ほど白血病を患い、わずか45で早世したとある。大阪出身で京都大学工学部を卒業後、村田製作所に勤務していたという経歴に親近を感じた。感じつつ、階段の句を再び読む。
空へゆく階段のなし稲の花
現代的な感傷がたしかな形になっている。
イタリアの旅から帰って来ると3月になっていた。もうすぐ春だ。今朝のツヴァイク道に紫はななを見つけた。枯れ山に彩りが少しずつ現れている。天地がゆっくり鳴動している。
そのくせ、遠くに見える太平洋は鈍色でよそよそしい顔をしていた。田中の詠む「階段のない世界」に思えた。
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