漫画の進化
『子連れ狼』(画:小島剛夕)の作者小池一夫さんに芝のホテルロビーで会った。現代漫画の一期生である。今や、一期にあたるのは、さいとうたかを、藤子不二雄A、さんなどわずかになったと氏は語る。現在73歳。身長180センチの偉丈夫は少しも衰えては居ない。それどころか、日本漫画のちから(実力/能力)をもっと世の中に広めたいと意欲十分である。
話の初めに氏は面白いことを語った。小説全部の売り上げが200億、映画は洋画邦画合わせて2000億、それに比べて日本の漫画は13兆ある。なのに、世間では芥川賞、直木賞と騒ぐが、漫画に対しては正当な評価を与えていない。そこを改善もしていきたいと、速射砲のように話す。よく知られているが、氏は後進の育成にも力を入れていて、小池一夫劇画村塾を開いている。ここから、高橋留美子、原哲夫など錚々たる人たちが巣立っている。名前の知られている漫画家、小説家、ゲーム作家だけで300人の塾生がいるそうだ。すごい人脈である。その影響は日本だけにとどまらない。
70年代に『子連れ狼』、『御用牙』、『修羅雪姫』、『忘八武士道』など、セックスとバイオレンスに満ちたアナーキーな時代劇作品を多数発表した。その多くが映画化(またはドラマ化)され、70年代の映画界に大きな影響を与えた。クエンティン・タランティーノなどは、小池氏の影響をかなり受けているという。
「漫画はキャラ立てが大事だ」というのが小池さんの漫画論の中心にある。物語の中心にインパクトのあるキャラクターを布置することの重要性を説いている。だからキャラクター原論の提唱者ともいわれる。
ところが、最近、さらに新しい理論を構想しているというのだ。その内容については、まだ言えない。現在の漫画のすさまじい進化と大きな広がりが、かえってある停滞に陥ったのではないかと考えたところから、小池さんは新しい漫画理論を打ち立てようとしているらしい。その話を昨日聞いたのだ。とても興味深い。だが、これをどういう形の番組に出来るか、思案がいる。
さきほどの現代漫画の一期生のことだが、手塚治虫、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、横山光輝、梶原一騎、藤子・F・不二雄ら、ほとんど物故している。ちばてつや、水島新司という人たちは2期生だそうだ。私は、てっきり1期生だと思っていたのだが。本宮ひろ志、小山ゆうらは3期生にあたる。私が漫画の現役読者だったのは、せいぜい3期生までだなと、あらためて思った。
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