べしべしべし
昨夜、フジテレビで赤塚不二夫特番をやっていた。来春に私も赤塚不二夫論をやろう と思っているので参考として見た。2時間特番の形式は最近珍しいドキュドラ、ドキュメンタリードラマだった。
ドラマ部分で感心したのは無名の役者をずらりと揃えたこと。名のある役者をほとんど起用していない。スターなしで、ゴールデンの人情ドラマを拵えたというのはちょっと凄い。赤塚だ石ノ森だとよく知られた人物を有名役者が演じると違和感が起きることがある。それを避けるうえでも、実在の人物を描く番組として妥当な選択だ。なかなかいいドラマだったが、なにせこれまで語られてきたトキワ荘の名エピソードが次々に出てくるのはいただけない。史実を単に再現しているようで、ドラマとしての薬味が効いていないと感じた。
それにしても、番組の前半はそのドラマとドキュメンタリーはうまくかみ合っていて、いい流れが出来ていた。赤塚が売れない時期を脱して、ハチャメチャの人生に乗り出していくあたりから、お定まりの「いい人」ドラマ展開になったような気がした。
今朝、目覚めると傍らに大磯図書館で借りた『バカは死んでもバカなのだ~赤塚不二夫対談集』(2001年)があった。ぱらぱらと読み始めたら、止まらない。昨夜見たヒューマニスト赤塚とはまったく違うアナーキーで知的で支離滅裂的ナンセンスの「巨匠」がいた。
赤塚の人格を形成した要素は2つあると私は見ている。一つは引き揚げから悪がきまでの幼少年時代。もう一つは映画、特にミュージカルは赤塚にかなりの影響を及ぼしているのじゃないだろうか、と今仮説を立てている。
赤塚キャラクターに”べし”というのがある。”~なのだ”、という言い方ばかり喧伝されているが、”~べし”というのもなかなかよかったのだが、今は閑却されている。この話し方は映画「七人の侍」からとったと赤塚は告白している。
志村喬扮する長老が「やるべし」と言い放つところから、赤塚が抜いてきたのだ。愛猫に「菊千代」とつけるなど、赤塚のクロサワ評価は半端でない。それと赤塚は志ん生を尊敬している。
赤塚は作品にする者には敬意を抱いていたようだ。偉そうなことを口先だけで言う輩はたくさん見てきたのだろう。実際に漫画なり映画なり芝居なりに形を残してきた、形象化してきた者には敬意をもっていた。「映像は難しいですよね。だって、証拠に残るんだもの」
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